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東京高等裁判所 平成8年(行ケ)203号 判決 1998年4月15日

東京都港区高輪3丁目22番9号

原告

ユニバーサル販売株式会社

代表者代表取締役

岡田和生

訴訟代理人弁理士

堀進

堀和子

東京都千代田区霞が関3丁目4番3号

被告

特許庁長官 荒井寿光

指定代理人

八巻惺

豊岡靜男

田中弘満

小川宗一

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第1  当事者の求めた判決

1  原告

特許庁が、平成7年審判第2815号事件について、平成8年7月17日にした審決を取り消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

2  被告

主文と同旨。

第2  当事者間に争いのない事実

1  特許庁における手続の経緯

原告は、昭和63年5月27日、名称を「弾球遊技機」とする発明(以下「本願発明」という。)につき、特許出願(特願昭63-128178号)をしたが、平成6年12月1日に拒絶査定を受けたので、平成7年2月15日、これに対する不服の審判の請求をした。

特許庁は、同請求を、平成7年審判第2815号事件として審理したうえ、平成8年7月17日、「本件審判の請求は、成り立たない。」との審決をし、その謄本は、同年8月22日、原告に送達された。

2  本願発明の要旨

通常の弾球遊技とは別の遊技を行うための遊技装置を備えた弾球遊技機において、遊技盤面上に打ち出された遊技球の個数を計数する計数手段と、該計数手段の計数値が予め定めた値に達したとき前記遊技装置を始動する駆動手段とを備えたことを特徴とする弾球遊技機。

3  審決の理由

審決は、別添審決書写し記載のとおり、本願発明が、本願出願日前に国内において頒布された特公昭57-12627号公報(以下「引用例」といい、そこに記載された発明を「引用例発明」という。)に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないとした。

なお、被告は、本件訴訟において、本願発明と引用例発明との相違点の認定(審決書5頁15~18行)は誤りであり、両発明は相違するところがなく同一であるから、特許法29条1項の規定により特許を受けることができないと主張を訂正した。これに対し、原告は、両発明の間に審決の認定した相違点がないこと及びこの主張の訂正自体を争うものではないが、後記のとおり、審決は本願発明と引用例発明との一致点を誤認したと主張する。

第3  原告主張の取消事由の要点

審決の理由中、本願発明の要旨の認定、引用例の記載事項の認定、本願発明と引用例発明とが、「通常の弾球遊技とは別の遊技を行うための遊技装置を備えたパチンコ遊技機」(審決書5頁9~11行)であることは、認める。

被告の訂正後においても、審決は、本願発明と引用例発明との一致点を誤認しており(取消事由)、本願発明と引用例発明とが同一と判断したものであるから、違法として取り消されなければならない。

1  審決は、本願発明と引用例発明との対比において、「引用例記載の『一定打球数検出手段』・・・は、本願発明においては・・・『計数手段』・・・に相当する」(審決書5頁3~9行)と認定したが、誤りである。

すなわち、本願発明の「計数手段」は、発明の要旨において、「遊技盤面上に打ち出された遊技球の個数を計数する」とされているから、遊技盤面上に打ち出された発射球だけではなく、打ち出された後に入賞球又はアウト球となる遊技球も、計数の対象に含むものである。

したがって、本願発明において、別遊技の開始条件である「計数手段の計数値が予め定めた値に達したとき」とは、単に発射球が一定個数に達した場合のみではなく、発射球以外の遊技球である入賞球とアウト球の個数の合計、あるいはそれぞれの個数の合計が、予め定めた値になった場合を含むものであり、この結果、本願発明では、計数手段で計数される複数種類の遊技球の個数に応じた、多様な別遊技開始条件の設定が可能となるものである。

これに対し、引用例発明の「一定打球数検出手段」は、遊技盤面上への発射球のみを計数するから、この点において本願発明と相違するものであり、したがって、引用例発明では、発射球以外の遊技球の個数が予め定めた値になることにより、別遊技を開始することはできない。

審決は、本願発明の「計数手段」と引用例発明の「一定打球数検出手段」との、計数すべき遊技球に関する上記相違点を、看過するものである。

2  審決は、本願発明と引用例発明との対比において、「引用例記載の・・・『一定個数打球する間に入賞球のないとき、可変表示部材の表示部に表示される識別情報を可変表示する手段』は、本願発明においては・・・『計数手段の計数値が予め定めた値に達したとき、遊技装置を始動する駆動手段』に相当する」(審決書5頁3~9行)と認定したが、誤りである。

すなわち、本願発明の駆動手段は、単純に、遊技球の個数が一定数に達すれば別遊技装置を始動するという構成である。しかも、前示のとおり、本願発明の遊技球は、発射球に限られず、入賞球やアウト球も含むから、別遊技開始条件は、それらの個数を組み合わせて種々に設定することが可能である。

これに対し、引用例発明の別遊技を開始させるための可変表示手段は、発射球が一定個数に達したときに別遊技を開始させるものであるが、それは入賞球がないという条件下でのみ成立するものである。また、一度でも入賞球があれば、発射球の個数とは関係なく別遊技が開始するから、「発射球が一定数に達すること」それ自体は、別遊技開始条件となり得ず、「入賞球が1個も発生しない」ことを、別遊技開始の必須の条件とするものである。しかも、引用例に開示された具体的な制御回路は、この条件を一体に組み込んだ構成であるから、この条件だけを技術的に分離・除外することは許されない。

審決は、本願発明の「駆動手段」と引用例発明の「可変表示する手段」との、別遊技装置の開始に関する上記相違点を、看過するものである。

第4  被告の反論の要点

審決の認定判断は正当であり、原告主張の審決取消事由は、理由がない。

1  本願発明の計数手段は、遊技球を計数するものであり、本願明細書によれば、この遊技球とは、発射球だけでなく、入賞球とアウト球の合計数でもよいと解されるが、両者は同じものといえる。また、別遊技開始条件である「計数手段の計数値が予め定めた値に達したとき」とは、「発射球の個数が予め定めた値になった時」、あるいは、「入賞球とアウト球の個数の合計が予め定めた値になった時」であるが、これも同一の条件といえる。

この点について、原告は、本願発明では多様な別遊技開始条件の設定が可能であり、例えば、入賞球のみ、あるいはアウト球のみを計数して、別遊技開始条件とすることもできる旨主張する。しかし、本願明細書には、入賞球とアウト球に関しては、「例えば、入賞球とアウト球の個数の合計が一定値になった時とする」(甲第2号証3頁右下欄11~12行)と記載されるだけであり、入賞球又はアウト球の個々の個数の合計を、別遊技の開始条件とする旨の記載はなく、これらの球数のみを別遊技開始条件とするものではない。

これに対し、引用例発明の「一定打球数検出手段」は、遊技盤面上に打ち出された発射球を計数するものである。

したがって、本願発明の「計数手段」と引用例発明の「一定打球数検出手段」とは、いずれも遊技球である発射球を計数するものであり、両者は相違しないから、この点に関する審決の認定(審決書5頁15~18行)に、誤りはない。

2  引用例発明の可変表示手段は、別遊技を開始させる場合について、「一定個数の打球途中に一度も入賞球の検出がないとき」という条件を前提にしてはいるものの、「発射球の検出が一定個数に達したとき」に別遊技を開始する旨を開示している。

これに対し、本願発明の駆動手段では、別遊技の開始に条件が付されておらず、単に「計数手段の計数値が予め定めた値に達したとき」に別遊技が開始するものとされ、これは、「発射球の個数が予め定めた値になったとき」をも意味するのである。

また、引用例発明の別遊技開始条件は、本願発明の別遊技開始条件である「遊技盤面上に打ち出された遊技球の計数値が予め定めた値に達したとき」を前提として、更に「遊技盤面上に打ち出された遊技球が一度も入賞球とならないとき」を付加し、限定していることになり、本願発明は、引用例発明の技術的背景をなすものといえる。

そうすると、引用例発明では、本願発明と同様に、遊技盤面上に打ち出された遊技球が予め定めた値に達したときに別遊技を開始させる旨を開示していることが、明らかである。

したがって、本願発明の「駆動手段」と引用例発明の「可変表示する手段」とは、同一の条件において別遊技を開始するものであり、両者は相違しないから、この点に関する審決の認定(審決書5頁15~18行)に、誤りはない。

第5  当裁判所の判断

1  審決の理由中、本願発明の要旨の認定、引用例の記載事項の認定、本願発明と引用例発明とが、「通常の弾球遊技とは別の遊技を行うための遊技装置を備えたパチンコ遊技機」(審決書5頁9~11行)であることは、当事者間に争いがない。

2  本願発明の「計数手段」は、発明の要旨において、「遊技盤面上に打ち出された遊技球の個数を計数する」ものとされるところ、この遊技盤面上に打ち出された遊技球とは、当然、遊技盤面上に打ち出された発射球を意味するものと認められるが、この点に関して、本願明細書(甲第2号証)には、「本発明において、計数手段で計数される遊技球には発射球、入賞球、外れ(アウト)球等があり、遊技装置による別遊技の開始条件として、例えば発射球の個数、又は入賞球とアウト球の個数の合計が予め定めた値になった時とする。」(同号証2頁右上欄1~5行)、「本発明の弾球遊技機においては、計数手段が遊技盤面上に打ち出された遊技球の個数を計数し、その数が予め定めた値に達したとき、駆動手段が遊技装置を始動して別遊技状態となる。」(同2頁右上欄14~17行)、「実施例において別遊技の可変表示を開始する条件は、例えば発射球100個とする。すなわち、発射球検出器20で検出した遊技球の個数が100に達する毎に、カウンタ31が駆動制御回路32及び33への駆動信号を出力し、可変表示装置6による可変表示を開始させる。別遊技開始条件は、上記の発射球以外の遊技球数に基づいて定めてもよい。例えば、入賞球とアウト球の個数の合計が一定値になった時とする。」(同3頁右下欄4~12行)と記載されている。

これらの記載及び第1~第4図によれば、本願発明において、別遊技を開始するため、計数手段で計数される遊技盤面上に打ち出された遊技球の個数とは、遊技盤面上に打ち出された発射球の全ての個数を意味するものであるが、これと同数の入賞球とアウト球の合計の個数でもよいものと認められる。そうすると、本願発明の計数手段とは、発射球の個数を計数するか、あるいは入賞球とアウト球の合計の個数を計数するものといえる。

これに対し、引用例発明の一定打球数検出手段が、遊技盤面上へ打ち出された発射球を計数することは、当事者間に争いがなく、このことは、引用例(甲第4号証)の記載に照らしても明らかである。

そうすると、引用例発明の一定打球数検出手段が計数する発射球は、本願発明の計数手段が計数する遊技球に含まれるものであるから、引用例発明の「一定打球数検出手段」が、本願発明の「計数手段」に相当することは明らかであり、この点に関する審決の認定(審決書5頁15~18行)に、誤りはない。

原告は、本願発明の計数手段は、遊技盤面上に打ち出された発射球だけではなく、入賞球又はアウト球も計数の対象に含むものであるから、本願発明の別遊技の開始条件は、発射球が一定個数に達した場合のみではなく、発射球以外の遊技球である入賞球とアウト球の個数の合計、あるいはそれぞれの個数の合計が、予め定めた値になった場合を含むと主張する。

しかし、前示のとおり、本願発明の計数手段の対象となる遊技球は、遊技盤面上に打ち出された遊技球の全てであり、発明の詳細な説明においても、発射球の全個数、又は入賞球とアウト球の個数の合計を、遊技盤面上に打ち出された遊技球の個数として開示しており、これが予め定めた値になったときを別遊技開始条件とするものと認められる。そして、本願発明の計数手段が、入賞球のみの個数や、アウト球のみの個数を計数し、これを別遊技開始条件とすることは、本願発明の要旨に全く記載のない事項であり、本願明細書において、このような構成を示唆する記載は認められない。

したがって、原告の主張は、本願明細書の記載に基づかない失当なものといわなければならない。

なお、原告は、平成5年12月7日付の手続補正書(甲第6号証)及び平成7年3月15日付の手続補正書(甲第9号証)において、本願発明の計数手段が、入賞球のみや、アウト球のみを遊技盤面上に打ち出された遊技球として計数する旨の補正請求を行ったが、これらの補正請求は、いずれも本願の当初明細書の要旨を変更するものとして、平成8年2月5日付の審決(甲第11、第12号証)で却下されて確定しており、これらの経緯からみても、原告の上記主張は、採用できない。

3  本願発明の別遊技開始条件が、「計数手段の計数値が予め定めた値に達したとき」であること、引用例の特許請求の範囲に、「入賞球検出手段出力がなくかつ前記一定打球数検出手段出力があることに応じて前記可変表示部材の表示部に表示される識別情報を一度だけ可変表示し、それによって一定個数打球する間に入賞球のないとき、可変表示部材の表示部に表示される識別情報を可変表示することを特徴とする」(審決書4頁5~11行)旨の記載があることは、当事者間に争いがなく、この記載によれば、引用例発明の別遊技開始条件は、「入賞球検出手段出力がなくかつ一定打球数検出手段出力があること」であると認められる。

さらに、この点に関して、引用例(甲第4号証)には、「この発明の目的は、・・・一定個数のパチンコ球を遊技盤上へ打込むことができ、可変表示部材を設けて遊技客の興趣を倍加でき、しかも1回の遊技に許容された一定数のパチンコ球を打球したとき1度も可変表示部材を可変表示する条件にならなかつた場合に1度だけ可変表示部材を可変表示させてサービスの向上を図れるようにした」(同号証2頁3欄17~24行)、「遊技客が一定個数のパチンコ球を打球したとき、・・・いずれにも入賞しなければ回転ドラム群41を回転駆動できない。しかしながら、一定個数打球したとき1個も入賞球がなければサービスとして1度だけ回転ドラム群41を回転駆動すれば、遊技客へのサービスを向上できよう。そこで、より好ましくは、一定個数打球したにもかかわらず1個も入賞しない場合は、次のごとくして1度だけ回転ドラム群41をサービスのために回転駆動する。」(同7頁13欄35~44行)と記載されている。

これらの記載によれば、引用例発明では、遊技客の興趣を倍加させるために可変表示部材を設け、遊技客へのサービスの向上の観点から、一度も入賞しなければ当該可変表示部材が可変表示しないことを問題点として認識し、その解決のために、入賞した場合だけでなく、一定個数打球しても入賞しない場合でも可変表示を行うこと、すなわち、入賞の有無によらずに可変表示のサービスを行うことが開示されているものと認められる。そうすると、引用例発明の別遊技を開始させるための可変表示手段は、遊技客の技術が劣る場合であっても、発射球が一定個数に達したときに別遊技を開始させるということを基本的なサービス手段として、これに入賞球がないということを付帯的な条件として付加したものと解することができる。

したがって、この入賞球がないという条件は、引用例発明における本質的な条件でないものと認められ、引用例発明に接した当業者は、このような付帯的条件を除外して引用例発明を把握し、その基本的な技術思想は、遊技球の個数の計数値が予め定めた値に達したときに別遊技を開始させるものであると理解できるものといわなければならない。

そうすると、本願発明の「駆動手段」と引用例発明の「可変表示する手段」とは、同一の条件において別遊技を開始するものであり、両者が相違しないことは、明らかである。

原告は、引用例発明の別遊技を開始させるための可変表示手段は、入賞球がないという条件下でのみ成立するものであって、「入賞球が1個も発生しない」ことを、別遊技開始の必須の条件とするものであり、引用例発明の具体的な制御回路は、この条件を一体に組み込んだ構成であるから、この条件だけを技術的に分離・除外することは許されないと主張する。

しかし、前示のとおり、引用例発明は、遊技球の個数の計数値が予め定めた値に達したときに別遊技を開始させる基本的な技術思想を開示するものであり、その可変表示手段は、入賞球が1個も発生しないことを別遊技開始の必須の条件とするものではないと認められる。また、当業者において、引用例発明の実施例における具体的な制御回路の構成によって、この基本的な技術思想の理解が困難となるものでないことは、明らかである。したがって、原告の上記主張は、採用することができない。

以上のとおりであるから、審決が、本願発明と引用例記載の発明との対比において、「引用例記載の『一定打球数検出手段』、『一定個数打球する間に入賞球のないとき、可変表示部材の表示部に表示される識別情報を可変表示する手段』は、本願発明においてはそれぞれ、『計数手段』、『計数手段の計数値が予め定めた値に達したとき、遊技装置を始動する駆動手段』に相当する」(審決書5頁3~9行)と認定したことに、誤りはない。

4  したがって、原告主張の取消事由はいずれも理由がなく、その他審決に取り消すべき瑕疵はない。

よって、原告の本訴請求は理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につき、行政事件訴訟法7条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 田中康久 裁判官 石原直樹 裁判官 清水節)

平成7年審判第2815号

審決

東京都港区高輪3丁目22番9号

請求人 ユニバーサル販売 株式会社

東京都中央区銀座6丁目4番5号 土屋ビル5階 堀国際特許事務所

代理人弁理士 堀進

東京都足立区足立3丁目12番15-306号 堀国際特許事務所

代理人弁理士 堀和子

昭和63年特許願第128178号「弾球遊技機」拒絶査定に対する審判事件(平成1年12月4日出願公開、特開平1-299576)について、次のとおり審決する.

結論

本件審判の請求は、成り立たない.

理由

1.手続の経緯、本願発明

本願は、昭和63年5月27日の出願であって、その特許を受けようとする発明は、その特許請求の範囲の請求項(1)及び請求項(2)に記載されたとおりのものと認められるところ、請求項(1)に記載された発明(以下、「本願発明」という)は、次のとおりである。

「通常の弾球遊技とは別の遊技を行うための遊技装置を備えた弾球遊技機において、遊技盤面上に打ち出された遊技球の個数を計数する計数手段と、該計数手段の計数値が予め定めた値に達したとき前記遊技装置を始動する駆動手段とを備えたことを特徴とする弾球遊技機。」

なお、平成5年12月7日付け及び平成7年3月15日付け手続き補正は、平成8年2月5日付けで共に却下され既に確定しているので、本願の特許を受けようとする発明を上記の通り認定した。

2.引用例

これに対して、原査定6拒絶の理由に引用された本願出願前に国内において頒布された特公昭57-12627号公報(昭和57年3月11日出願公告、以下「引用例」という)には、「パチンコ球を打球するための打球機構を含み、コインの投入に応じて一定個数のパチンコ球を打球遊技可能なコイン遊技機において、入賞孔が形成された遊技盤、前記遊技盤上に装着された発射球誘導レールの球出口部に関連的に設けられ、かつ前記打球機構で打球されたパチンコ球が盤面に達したことを検出する発射球検出手段、前記発射球検出手段出力に応答して発射球数を計数し、一定個数だけ打球したことを検出する一定打球数検出手段、前記打球機構に関連して設けられ、前記一定打球数検出手段出力に応答して該打球機構を不能動化させて遊技を禁止する遊技禁止手段、前記入賞孔へ入賞した入賞球を検出する入賞球検出手段、前記遊技盤上に配設され、その表示部に複数種類の識別情報を表示しかつ該表示部に表示する識別情報の種類を可変表示する可変表示部材、および可変表示・停止制御手段を備え、前記可変表示・停止制御手段は、前記入賞球検出手段出力のあることに応答して前記可変表示部材の表示部で表示される識別情報を可変表示制御し、かつ停止指令信号に応じて該可変表示部材の表示部で表示される識別情報の可変表示を停止制御し、前記入賞球検出手段出力がなくかつ前記一定打球数検出手段出力があることに応じて前記可変表示部材の表示部に表示される識別情報を一度だけ可変表示し、それによって一定個数打球する間に入賞球のないとき、可変表示部材の表示部に表示される識別情報を可変表示することを特徴とするコイン遊技機。」(特許請求の範囲)、及び「コイン遊技機の盤上に回転ドラムや・・・セグメント表示器等のような可変表示部材を設ける。そして、入賞球のあったとき、または一定数打球したにもかかわらず一度も入賞球のないとき、可変表示部材で表示される識別情報を可変表示させ、・・・停止指令信号に応じて可変表示部材の可変表示を停止制御するようにしたものである。」(第2頁3欄第37行~第4欄第2行)が図面と共に記載されている。

3.対比

そこで、本願発明と引用例に記載されたものとを対比すると、引用例記載の「一定打球数検出手段」、「一定個数打球する間に入賞球のないとき、可変表示部材の表示部に表示される識別情報を可変表示する手段」は、本願発明においてはそれぞれ、「計数手段」、「計数手段の計数値が予め定めた値に達したとき、遊技装置を始動する駆動手段」に相当するから、両者は、通常の弾球遊技とは別の遊技を行うための遊技装置を備えたパチンコ遊技機において、遊技盤面上に打ち出された遊技球の個数を計数する計数手段と、該計数手段の計数値が予め定めた値に達したとき前記遊技装置を始動する駆動手段とを備えた点で一致する。

ただ、本願発明が、パチンコ機だけでなくスロットマシン等も含む弾球遊技機に関するのに対し、引用例記載のものは、パチンコ球を打球可能なコイン遊技機である点で、両者は、一応相違する。

4.判断

しかしながら、スロットマシンは、パチンコ遊技機と同様、コイン遊技機として周知といえるから、上記引用例記載の「パチンコ球を打球可能なコイン遊技機」に代えてパチンコ機だけでなくスロットマシン等も含む弾球遊技機を用いてみることは、当業者が容易に発明をすることができる程度のことといえる。

そして、それにより奏される効果も、当然に予測される程度のものと認められる。

5.むすび

したがって、本願発明は、上記引用例に記載されたものに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。

平成8年7月17日

審判長特許庁審判官(略)

特許庁審判官(略)

特許庁審判官(略)

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